じぶんの株価

Fear&Greed Indexを見てタイミング投資はできるのか?

Fear & Greed Indexが「極度の恐怖」を示すと、「ここでまとめて買えば、毎月の積立より有利ではないか」と考えたくなります。反対に、強気へ切り替わってから買えば、下落相場を避けられるようにも見えます。そこで本記事では、毎営業日S&P500へ投資する方法と、現金を貯めてサインが出た日にまとめて買う方法を、同じ入金額で比較しました。

結論は、恐怖指数は相場の状態を読む道具として役立つ一方、積立を止めるほどの成績差は今回の検証では生まれなかった、です。全期間で最良だった「31以下で買う」も、積立100に対して100.59。約0.6%の資産額の差でした。しかも、前半のデータで選んだルールを後半に持ち込むと、積立を下回りました。数字の読み方と、そうなる仕組みを順に見ていきます。

2012年に生まれた、株式市場の感情を測る指数

CNN自身が振り返った開発史によると、この指数は金融危機と欧州債務危機を経たCNNMoneyが、VIXだけでなく市場全体のリスク選好を伝えるために作り、2012年春に公開しました。Lex HarisやPaul R. La Monicaらのチームが、投資家への取材を踏まえて七つの指標を組み合わせています。

尺度は0〜100。低いほど恐怖、高いほど強気です。株価の勢い、新高値と新安値、売買の広がり、プット・コール、VIX、低格付け債の需要、安全資産の需要をまとめます。アンケートで気分を尋ねるのではなく、売買や価格に表れたリスクの取り方を数値化する指数です。暗号資産向けの同名指数とは別物です。

重要なのは、現在の恐怖が分かることと、明日の底値が分かることは違う点です。株価が下がり、ヘッジ需要が増えた結果として指数が低くなるなら、下落の途中でも「恐怖」は続きます。一方で、高い値が続く強気相場は、株式を持っている人にとって利益が積み上がる時間です。この二つの性質が、待って買う戦略の成績を左右します。

比較条件:毎営業日100米ドル、保有株は売らない

期間は2021年2月2日〜2025年12月31日の1,235営業日。S&P500への投資はSPYの配当調整済み終値でモデル化し、配当再投資を含めます。毎営業日の入金は100米ドルで、全戦略の累計入金は123,500米ドル。毎営業日の積立の期末資産額は185,212米ドルでした。

サイン戦略も同じ日に同じ金額を入金し、買わない日は現金へ積み上げます。条件を満たした日は、当日の入金を含む待機資金を全額投資。既に買った株は売りません。「恐怖の日に既存資産を全部売買する」戦略ではなく、これから入る資金の買付を前倒し・後ろ倒しする比較です。

判定には前営業日のFear & GreedやVIXを使い、翌営業日の調整済み終値で買います。当日の終値サインで同じ終値を買う計算にはしていません。待機資金には米3か月国債の月平均金利TB3MSを2か月遅らせた年率代理値で暦日分の利息を付けます。未公表の当月平均を使わないための処理です。これは銀行預金や短期債ETFの実績そのものではなく、現金利息の計算モデルです。税金、売買手数料、為替は含めず、SPYに織り込まれた運用費用を別途重ねて引きません。

三つのFear & Greedサインを、しきい値で比較する

①恐怖で買う:前日の指数がしきい値以下なら買います。②強気で買う:しきい値以上なら買います。この二つは条件が続けば毎日買います。③回復で買う:指数がしきい値未満から以上へ上抜けたときだけ買います。しきい値は5〜95の整数を全て調べました。横軸は指数の値、縦軸は各戦略の期末資産額を積立=100にしたものです。105なら、同じ入金で期末資産が積立より5%多いという意味で、年率5%ではありません。

Fear & Greedのしきい値と三つの買付ルールの期末資産額
2021年2月2日〜2025年12月31日。*待機は営業日数。期末現金も資産額に含む。
ルール最良しきい値積立=100期末資産額買付日数最長待機*
恐怖で買う≤ 31100.59$186,301277130
強気で買う≥ 14100.01$185,235119310
回復で買う↑ 3499.19$183,70329128
VIX急騰で買う≥ 2%100.08$185,35940119

恐怖ルールの最良値は31、期末資産は186,301米ドル。積立との差は約1,089米ドルです。恐怖側のほどほどの水準では、下がった局面に入金済みの資金を回す利点が見えます。しかし、より低い恐怖を待てばもっと良くなるわけではありません。10以下では98.26でした。「めったに出ない強烈なサイン」を待つ間に、上昇している市場への参加が遅れます。

強気ルールの最良値は14で100.01。これは「強気が確認できるまで待つ」と呼ぶには低すぎる水準で、1,235日のうち1,193日も買っています。つまり最良点が示したのは、高い強気を待つ技術ではなく、ほぼ毎日買う方法への接近です。回復ルールの最良値34は99.19。上抜けを確認することで入りやすくなっても、待機の損失を全て取り戻せませんでした。

分かりやすい固定ルールはどうなったか

全戦略で1,235営業日×100米ドルを入金。累計入金は123,500米ドルで同一。
戦略サイン積立=100期末資産額最長待機(営業日)
毎営業日積立—100.00$185,2120
恐怖で買うFG ≤ 2599.96$185,140192
強気で買うFG ≥ 7596.18$178,132332
回復で買うFG ↑ 5098.38$182,21499
VIX急騰で買うVIX ≥ +10%98.95$183,263107
積立と三つの代表的サインの資産推移

「25以下で買う」は99.96で、積立とほぼ同額です。ただし最長192営業日にわたり買付を見送りました。「75以上で買う」は96.18で、最長332営業日の待機です。「50を上抜けたら買う」は98.38。サインを待つことには資金をまとめて投入できる利点がありますが、待つ長さも同時に増えます。図の累計入金額との差を見ると、単に買付日を減らすことと、利益を増やすことが別だと分かります。

2022年には有利でも、その後は同じ最適値にならない

恐怖の買付しきい値と期間別の積立比較
各期間で保有ゼロから再開始し、その期間の積立を100にして比較。
期間FG 25以下恐怖ルールの最良値最良資産額(積立=100)最良値での買付日数
2021–202599.9631100.59277
2022103.7816106.0617
2023–202599.215100.212

2022年だけなら恐怖ルールの最良値は16で106.06。25以下でも103.78でした。下落している期間に現金を残し、まとまった資金を低い価格で投じる仕組みが効いています。ただし、この年の強気・回復ルールの最大値は、しきい値76で一度も株を買わなかった場合です。VIXルールも25%で買付ゼロが最大でした。下落年の現金保有が勝ったのであって、売買サインが底値を正確に発見した結果ではありません。

2023〜2025年では25以下のルールが99.21。恐怖ルールの最大は5以下の100.21ですが、買付はわずか2日で、最長567営業日の待機でした。2025年の極端な恐怖へ長く貯めた現金を投じる、非常に特定の経路が作ったピークです。全期間の31、2022年の16、2023〜2025年の5と、最良値は動きました。実際に使うには、未来の相場に合わせて過去の最良値を選び直すことはできません。

前半で選んだしきい値を、後半で試す

そこで2021〜2023年だけで各ルールの最良値を選び、しきい値を固定して2024〜2025年を別の口座として計算しました。前半で選ばれたのは恐怖27、強気13、回復38、VIX前日比3%です。後半の開始時には保有株も待機資金もゼロへ戻し、ルールだけを引き継ぎます。

前半期間で選んだしきい値の後半期間の成績

後半の成績は、恐怖98.84、強気99.98、回復96.93、VIX99.85。全て積立100を下回りました。全期間のグラフで最良点を探すことは「その時代を最もうまく説明する値」を見つける作業です。前半で決めたルールを後半へ移すと、その数値を実際に持ち運べるかが見えます。今回の結果では、積立を止めて待つ判断を支える優位性は残りませんでした。

VIXの急騰だけをサインにした場合

VIXが前日比で何%上がったかも調べました。20から22なら+10%です。水準が10になったという意味ではありません。前日の変化率がしきい値以上なら翌営業日に待機資金を買付へ回します。しきい値は0〜50%を1ポイント刻みで比較しました。

VIX前日比の急騰しきい値と期末資産額

全期間の最良値は+2%で100.08。+10%は98.95でした。日常的な小さな上昇を含めると積立へ近づき、強い急騰へ絞るほど長く現金を抱えます。VIXとFear & Greedは別の入口ですが、「サインを厳しくするほど買付の機会を減らす」という構造は同じです。

待っている現金の金利は、結果をどれだけ変えるか

恐怖で買うルールの待機金利ありと金利ゼロの比較

同じ恐怖ルールを、待機金利ありとゼロで並べました。金利が高いときは待機の負担を軽くできます。しかし、待機金利を付けても、全期間の最良点は積立より約0.6%上の資産額にとどまります。金利は「待つ」戦略の収益を支えますが、強烈なサインまで積立を止めれば高い収益になる、という関係にはなりません。

このボードでは、恐怖の強さと株価の反応を分けて見る

当サイトではS&P500、VIX、米国債10年金利を並べ、Fear & Greedの値はCNNのページで補うと見やすくなります。まずVIXが上がった時刻にS&P500がどれだけ下がったかを見る。次にVIXが高いままでも株価が下げ止まるのか、VIXが下がってから株価が戻るのかを追います。恐怖が強いことと、売りが続いていることを分けて読む作業です。

株価下落と金利低下が同時なら、景気やリスク回避の材料を確認する場面です。株価下落と金利上昇なら、インフレや割引率の圧力を探します。VIXが高いから買う、と一つの数字だけで決めるより、恐怖を生んだ材料と株価の反応を並べたほうが、市場の変化が具体的に見えてきます。

今回の検証から採る方針は、積立を土台に残し、Fear & Greedは相場を読む補助線にすることです。追加資金の判断に利用するなら、別枠の資金について入金・待機・買付のルールを決め、積立を継続する口座と区別して評価します。安く買えた一回だけでなく、その前に待った時間まで含めて考える。この視点が、恐怖を活かす投資と、恐怖に振り回される投資を分けます。

データと計算の範囲

Fear & GreedはCNN由来の公開保存CSVを用い、2021年2月以降の系列に限定しました。取得時点の保存履歴による分析で、当時の各時刻に配信された値を完全に保存したリアルタイム再現ではありません。SPYはYahoo Financeの配当調整済み終値、VIXはCboe公式日次終値、待機金利はFREDのTB3MSを使用。必要な前営業日サインの欠損は今回の期間では0日でした。しきい値の最良点は本記事の範囲での過去実績の最大であり、期間末の現金も含めています。

データと参考資料

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