じぶんの株価

米国ETFで作る、毎月インカムが入るポートフォリオ

配当金が口座に入ると、投資が少し身近になります。価格が上下するだけの画面と違って、「保有している資産が収入を生んだ」と実感できるからです。日本証券業協会の2025年調査では、株式保有者3,638人の21.4%が配当・分配金・利子を重視する投資方針を選びました。米国でも、Vanguardが紹介した2025年の調査では、対象の株式インカムファンド保有者の約半数が配当を出す企業への投資を好むと回答しています。対象集団が異なるので日米の人気を同じ比率で順位付けする数字ではありませんが、現金収入のある投資への支持は両国にあります。

では、配当を楽しみながら広く分散し、毎月インカムを受け取るにはどう組めばいいでしょうか。今回は四半期分配のETFを中心に据え、実際の支払月をずらす方法を調べました。結論は、米国ETFのSPY・VXUSに日本上場ETFの1489を少量加えると、2025年は12か月すべてに分配金の支払いがありました。一方、世界株の広さを最優先するなら、VTI・VXUSの分配金を現金口座でならす方が素直です。毎月の入金と、毎月同額の収入は別の設計なのです。

米国ETFが便利な理由と、「利益しか分配しない」の誤解

ETFなら、ひとつの注文で多数の企業を保有できます。SPYは米国大型株、VTIは米国の大型・中型・小型株、VXUSは米国外の先進国と新興国が対象です。取引時間中に売買でき、SPYのような大規模な商品は売買の厚さにも優れます。個別の高配当株を何十社も選ぶより、企業の入れ替えを指数とファンドに任せられる点が大きな利点です。買いやすさは利用する証券会社の取扱い、売買単位、手数料にも左右されます。

ただし、米国ETFでも元本払戻しに相当するReturn of Capital(ROC)が分配に含まれることがあります。日本の投資信託で投資家ごとの個別元本に基づいて区分する「元本払戻金(特別分配金)」とは同じ制度ではありません。「その区分がない」ことを「利益以外は絶対に分配されない」と読み替えるのは誤りです。米国税制では非配当分配による取得価額の減額が説明されています。日本居住者の税額計算はまた別の話です。

分配金が支払われれば、その分だけファンドの資産は外へ出ます。高い分配率だけで運用の良さを判定せず、価格変動と分配を合わせたトータルリターンで見る。これが今回の比較の出発点です。

四半期分配3本で、支払月を12か月に広げる

重要なのは決算月でも権利落ち月でもなく、支払月です。SPYは四半期分配ですが、2025年の支払いは1・4・7・10月。VXUSは3・6・9・12月。日本上場の1489は1・4・7・10月決算の翌月に支払い、2025年は2・5・8・11月でした。この三つの組み合わせなら、毎月分配型の株式ETFに頼らずに12か月を埋められます。

ETF主な対象分配頻度2025年の支払月
VTI全米株・時価総額加重四半期3 / 7 / 10 / 12
VXUS米国外の先進国・新興国四半期3 / 6 / 9 / 12
SPYS&P500・米国大型株四半期1 / 4 / 7 / 10
1489日本の高配当株50銘柄四半期2 / 5 / 8 / 11
BND米国投資適格債券毎月2〜12月(12月は2回)

SPYの1月分は前年12月の権利に対応します。1月に買っても、その1月の支払いを受けられるわけではありません。また、ETFの支払日と証券会社が顧客口座へ反映する日は一致するとは限りません。月末支払いのSPYなどは、証券会社側の処理によって翌月に見えることもあります。ここではファンドの公表した支払日で比較しています。

1489は日経平均の構成企業から高配当株50銘柄を選ぶ商品で、全世界株そのものではありません。VXUSにも日本株が含まれるため、1489を加えると日本と高配当株を上乗せすることになります。SPYもVTIと違って米国中小型株を広く含みません。カレンダーを整える代わりに生じるこの違いを、配分と成績の両方で確認します。

比較する5案:分散を先に決め、入金日を後から整える

世界株の基本案はVTI 62%・VXUS 38%。ここでの62対38は比較のための固定配分であり、その時々の世界の時価総額比率を自動追跡する設定ではありません。四半期分配ラダーはSPY 62%・VXUS 33%・1489 5%。米国の比率を維持しつつ、米国外枠の一部を1489へ置き換えます。60/40案では、それぞれの株式配分を6割に縮め、BNDを4割加えます。

案VTIVXUSBNDSPY1489加重費用率
世界株・基本62%38%0%0%0%0.038%
四半期分配ラダー0%33%0%62%5%0.090%
世界株60/4037.2%22.8%40%0%0%0.035%
分配ラダー60/400%19.8%40%37.2%3%0.066%
全米株・基本100%0%0%0%0%0.030%

BNDは米国の投資適格債券へ広く投資する毎月分配ETFです。採用理由は空き月を埋めることではなく、株式と債券の配分を設計すること。株式だけのラダーは3本とも四半期分配、60/40のラダーでも株式部分は四半期分配を保ちます。参考として、米国だけに投資するVTI 100%も比較します。費用率は2026年10月確認の公表値を配分で加重したもの。売買手数料・為替コスト・その他の費用は含みません。

毎月入る。でも2月は9ドル、12月は763ドル

2024年末のETF評価額を10万ドルとし、2025年は口数を変えずに保有した場合の税引前分配金を計算しました。1489の分配金は支払日のドル円でドル換算しています。SPYの前年12月分の権利を持っていた既存保有者を想定し、年末の価格は口数をそろえる評価基準として使います。

2025年の支払月別分配金:四半期分配ラダーと世界株の比較
案年間入金月平均最少月入金月数均等化の初期準備金
世界株・基本$2,350$196$06$887
四半期分配ラダー$2,311$193$912$571
世界株60/40$3,000$250$011$670
分配ラダー60/40$2,976$248$12512$481
全米株・基本$1,296$108$04$318

四半期分配ラダーの年間入金は2,311ドル、月平均193ドル。12か月すべてで入金がありますが、2月は約9ドル、8月は約14ドルしかありません。1489の少量配分と、日本株の配当時期の偏りが効くためです。12月はVXUSの大きな分配で763ドルに増えます。毎月の生活費を同額で賄うなら、この凸凹をさらに現金でならす必要があります。

支払月世界株・基本四半期分配ラダー世界株60/40分配ラダー60/40
1$0$208$0$125
2$0$9$131$136
3$334$107$322$186
4$0$179$134$241
5$0$93$131$187
6$313$272$321$296
7$195$186$248$243
8$0$14$135$143
9$232$202$274$256
10$194$194$248$248
11$0$85$136$187
12$1,082$763$920$728

世界株・基本案は年間2,350ドル、入金は6か月でした。VTIの2025年の支払いは3・7・10・12月で、VXUSの3・6・9・12月と一部が重なります。四半期分配だから常に3・6・9・12月、という思い込みは禁物です。さらにBNDも、2025年の支払予定では1月がなく12月に2回。毎月分配という表示だけでは、すべての暦月への入金は確認できません。

分散を崩さず毎月受け取る、現金口座という選択肢

ETFから入った分配金を専用の現金口座に貯め、そこから毎月一定額を取り出せば、支払月のために投資対象を変えずに済みます。今回の2025年実績を月末に集計し、年収入÷12を毎月末に取り出す計算では、世界株・基本案は初期準備金887ドルで、毎月約196ドルを取り出せました。四半期分配ラダーなら準備金571ドル、毎月約193ドルです。

これは年間の分配金を把握したうえでの事後計算です。実運用では前年度の税引後分配を基に控えめな月額を設定し、残高を見て年1回調整する方が使いやすい。準備金は10万ドルのETF評価額とは別に必要で、上のリスク・シャープの表には含めていません。現金を含む総資産10万ドルで組むならETF投資額をその分減らし、分配額も減らします。現金の利息はこの均等化計算に含めていません。

合成リスクとシャープ:入金日程ではなく、中身が成績を作る

共通期間の2018〜2025年について、ドル建ての月次トータルリターンを計算し、毎月目標配分へ戻しました。合成リスクは月次変動の年率化、シャープは米国短期国債金利を超えた収益の効率です。1489もドル換算するので、日本株の値動きだけでなく円の変動を含みます。

案合成リスクシャープ年率複利月末最大下落
世界株・基本15.98%0.58211.08%-25.46%
四半期分配ラダー15.38%0.63111.63%-24.20%
世界株60/4010.89%0.4887.51%-21.11%
分配ラダー60/4010.52%0.5297.81%-20.32%
全米株・基本16.95%0.69013.59%-24.82%
2018〜2025年、債券比率別の合成リスク

世界株・基本のリスクは15.98%、ラダーは15.38%。60/40では10.89%と10.52%でした。株と債券を混ぜる効果の方が、分配ラダーへの変更より大きいと分かります。今回の曲線の最小リスク点はBND 100%ですが、それは株式の成長を外した別の運用です。「最も静かな配分」と「長期の成長を取りたい配分」を混同しないことが大切です。

2018〜2025年、債券比率別のシャープレシオ

全期間のシャープは世界株・基本0.582、ラダー0.631。60/40では0.488と0.529です。債券比率の曲線では両案とも0%、つまり株式のみが最大でした。これは分配回数を増やすと成績が上がるという結果ではありません。SPYへの変更、日本高配当株の追加、米国外株の減少、円の動きという投資対象の変更が結果を作っています。分配金の日付には、それ自体でリターンを増やす力はありません。

期間を変えると、ラダーが常に勝つわけではない

期間案合成リスクシャープ年率複利
2018–2020世界株・基本18.84%0.55810.79%
2018–2020四半期分配ラダー18.01%0.53810.07%
2018–2020世界株60/4011.68%0.6739.08%
2018–2020分配ラダー60/4011.15%0.6618.62%
2021–2025世界株・基本14.16%0.60611.26%
2021–2025四半期分配ラダー13.73%0.70812.58%
2021–2025世界株60/4010.48%0.3616.57%
2021–2025分配ラダー60/4010.22%0.4387.32%
2022世界株・基本21.51%-0.903-18.09%
2022四半期分配ラダー21.39%-0.803-16.17%
2022世界株60/4015.64%-1.142-15.89%
2022分配ラダー60/4015.58%-1.059-14.73%
2021〜2025年、債券比率別の合成リスク
2021〜2025年、債券比率別のシャープレシオ

2018〜2020年は、株式ラダーのシャープ0.538に対して基本案0.558。2021〜2025年ではラダー0.708、基本案0.606へ逆転しました。短い期間の順位を見て、支払月だけで全資産を乗り換える理由にはできません。一方、2022年は60/40の基本案も年率複利−15.89%。株と債券が一緒に下がる年には、分配金が入り続けても資産価格の下落を消せません。

全期間のVTIとBNDの月次相関は0.464、直近5年は0.641でした。債券は株式より振れが小さかった一方、いつも逆向きではありません。VTIとSPYの相関は0.996で、両方を増やしても独立した分散先が増えるというより、似た米国株の保有が増えます。カレンダーの分散と価格変動の分散は、別々に確認するのが正解です。

私ならどう組むか:基本案を軸に、毎月の入金を楽しむならラダー

分散の素直さを優先するなら、VTI・VXUSと現金口座が第一候補です。全米株と米国外株の広さを保ち、支払月に振り回されません。価格の振れを抑える目的があるならBNDを加え、60/40案を比較の出発点にします。

毎月、ファンドから分配が入る体験を重視するなら、SPY 62%・VXUS 33%・1489 5%のラダーを提案します。株式部分を四半期分配だけで構成し、日本上場ETFは5%の補完役にとどめる。インカムの最低月まである程度厚くしたいなら、SPY 37.2%・VXUS 19.8%・1489 3%・BND 40%。2025年の最少月は約125ドルまで上がりました。ただし、それでも毎月同額ではないので現金管理は残ります。

分配額の小さい2月・8月を無理に他の月とそろえるため1489を大幅に増やすと、日本高配当株への偏りが強くなります。投資先の配分は成長とリスクから決め、入金の凸凹は現金で処理する。この順番を守ると、配当の楽しさと分散の合理性を両立しやすくなります。

このボードでの見方:VTI・VXUS・1489・BNDを並べる

S&P500とVTIが似た線を描く日は米国株の共通材料、VXUSだけが強い日は米国外の相対的な強さを調べる入口です。BNDが株と同時に下がるなら金利上昇による共通圧力、株が下がってBNDが上がるなら債券がその場面で支えになっている、と読む手がかりになります。1日の動きだけで数年の相関を決めず、同時下落と回復の違いを継続して見ます。

1489は東京市場、SPY・VXUS・BNDは米国市場なので、同じ画面でも動く時間が違います。1489の円建てチャートと今回のドル換算成績も同一ではありません。ドル円を加えると、円安が米国ETFの円換算収益を押し上げる一方、ドルから見た日本株の収益には逆向きに働く関係も追えます。日々の価格チャートには分配金の再投資は含まれないため、長期成績の表と役割を分けて使います。

データと計算方法

計算日2026年10月12日。2017年12月末を初期値に、2018年1月〜2025年12月の96月を使用。VTI・VXUS・BND・SPYはYahoo Financeの分配調整後日次価格から各月の最終取引価格を採用。1489は同データの分配イベントに重複と分割未調整値があったため、分割調整済み月末価格と運用会社の分配実績から、月末に分配を再投資する方式で月次収益を再構成しました。2024年の1対30分割に合わせ過去の分配額も調整。各市場と為替の月末終値には時刻差があります。

1489の円建て月次収益は(当月末価格+当月分配額)÷前月末価格−1。ドル建て倍率は円建て倍率×前月末ドル円÷当月末ドル円。合成月次収益は各ETF収益の配分加重和、リスクは標本標準偏差×√12。シャープは前月のFRED TB3MS年率÷12を月次無リスク収益として、月次超過収益の平均÷標本標準偏差×√12。年率複利は累積倍率の12/月数乗−1、最大下落は初期値を含む月末資産の最高値から計算しました。日次最大下落は別の数値です。

成績の比較は分配再投資・月次リバランス、2025年インカムの比較は口数固定・分配再投資なしです。両者を足して利益を二重に数えません。入金計算にはVanguardの公式支払日程、SPYの支払履歴、1489の公式分配通知を使いました。Vanguard3本の分配額は取得データの小数点以下3桁を使用。1489は円で受け取り、支払日以前の最新ドル円でドル相当に換算。部分口数を許す比較モデルであり、実注文では口数単位に丸めます。税金、売買手数料、両替費用、現金の利息は除外。円生活者の税引後収入を示す表ではありません。

データと参考資料

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